おばちゃんの呪縛

2007.07.23
未―コラム記者ノート

 丹波市内の、ある跡継ぎの開業医から雑談で聞いた話。診療が遅くなることもあるため、妻子が住む他市の自宅には週末しか帰らず、平日は実家に泊まると聞き驚いた。 「先生はなぜわざわざ田舎に勤められているのですか」と尋ねると、「後継ぎだからです」とのこと。子どものころから散髪屋などでも「お医者さんになってんやろ?」といわれ、医学部に入学すると近所のおばちゃんいわく「これで安心して病気になれるわ」。笑い話のようだが、これが「あの人たちがいるから帰らなければ」という呪縛になったらしい。 人口流出は丹波地域でも最大の課題の一つ。篠山市は「帰ろう住もう運動」をスローガンにしている。しかし、親が「帰って来い(来てくれ)」と言わなければ、いったん外に出た若者はなかなか残らない。それが現実ではないか。 「移住・住みかえ支援機構(JTI)」の取り組みを最近知った。シニア世代のマイホームを借り上げ、広いスペースを必要としている子育て中の世代などに貸す制度。都会と田舎の間でも「年齢による家・地域の住みかえ」ができるようになれば、と想像が膨らむ。(徳舛 純)

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