医療の不確実性に対する認識

2008.03.06
未―コラム記者ノート

 千葉県東金市で開かれた、県立東金病院の特別シンポジウムに出席した。シンポジストは、立場やアプローチの方法は違えど、住民と医療者の間の溝を埋める、という共通の思いがあり、感銘を受けた。 溝の1つが、「医療の不確実性に対する認識」だ。医師は、全部の病気を治せるとは思っていないし、自分の見立てが常に100%正しいと思っている人も少ないだろう。外科手術に代表されるように、「治療という行為自体」が体を傷つけるという認識が、医療者の側にはあるが、患者の側には乏しい。医療者は、傷つける以上の結果が得られる「可能性」があるから手術をする。患者はそれを、「絶対」と思ってしまう。 ある医師から、医療者の中ではよく知られている逸話を教わった。45年前、東大の高名な教授が退官記念の講演会で、自身の誤診率を14・2%と発表した。住民(患者)側は、その高さに、医師は反対にその低さに驚いたという。 「医療は完全でなく、不幸なてん末をたどること『も』ある」。この『も』の意味を理解する住民を増やすことが溝を埋める一助になり、医療再生の礎になると考える。(足立智和)

関連記事