「芽が出たんですよ」―。興奮気味に教えてくれたのは、篠山市商工会青年部篠山支部の部員さん。「すぐに行きます」と答え、取材先への道を急いだ。 同支部は、2006年に全滅した篠山城跡南濠のハスの再生事業に取り組んでいる。 取材先に着くと、濠の泥の底から拾い上げたハスの種が、コップの中で発芽していた。20センチほど伸びた芽の先に、小さな葉がついていた。水から顔を出しているのを見ると、泥の中で苦しかったのか、息継ぎをしているように見えた。 部員が泥々になりながら、種をすくい上げていた取材に続いて、発芽を喜ぶ取材。活動を追っていると、自分まで事業に参加しているような気持ちになり、芽を見た時はとてもうれしかった。 「子どものころ見ていた、美しいハスの名所を復活させ、子どもたちにも見せてやりたい」。そんな思いからスタートした事業が、確かに実を結び始めている。私は地元の人間ではないので、南濠のハスを見たことがない。でもいつの日か、緑色の葉とピンク色の花をつけたハスでいっぱいになった濠を取材する日を心待ちにしている。(森田靖久)