「ヨォーオイ、ヨーイ、デッカンショ!」。目を閉じれば、今でも祭りの賑わいと興奮がよみがえる。 見る間に入道雲がわき立つ炎天下、ビール片手に祭りを楽しむ来場者を横目に見ながら、取材を続けた。 ようやく夕暮れ。心地よい涼風が頬をなで、ホッとしたのも束の間。目玉イベント「競演会」の始まりである。上位入賞を目指す9団体が「ヨォーオイ、ヨーイ、デッカンショ」と気合いの入ったかけ声を響かせ、練習の成果を披露した。 見事に優勝の栄冠に輝いたのは「丹南音頭保存会」。優勝が告げられると「ギャーッ」と絶叫に似た歓声が上がった。心の底から喜びを味わっている姿をみて、熱いものがこみ上げた。事前に練習風景を取材した団体だったので、他人事には思えなかった。 暑くて、熱い祭りだった。それから数日後、仕事帰りに何気なく祭りの会場だった「三の丸広場」へ立ち寄った。辺りの草むらからは早くも秋の虫の声が聞こえる。祭りの後の静けさ―。吹き抜けていく風に秋の気配を感じた。 (太治庄三)