丹波地域で秋の「タカの渡り」が始まった。春に東南アジアなどの南方から日本に渡ってきたタカが、繁殖、子育てを済ませ、秋に越冬のため、再び南方へ渡って行くというタカの大移動だ。 この時期、丹波地域では「ハチクマ」というトビ大ののタカがよく見られる。名前にハチが付くように、ハチの幼虫を主食とする変わった習性を持つ。普段は滅多に見ることのない珍しいタカだが、渡りの季節にはその姿をたっぷりと見せてくれる。双眼鏡で彼らの姿を追っていると、時折レンズ越しに目が合い、ドキリとさせられる。私も含めて愛好家のいい大人たちが集まって、日がな一日、空を見上げている姿が、やはりむこうも気になるようだ。 私たちの頭の上で、人知れず展開している地球規模の壮大なドラマ「タカの渡り」。そんな世界を知ってもらいたくて記事にした。 なにかと忙しい現代社会。疲れやストレスで、うつむき加減になることも多いが、この時期だけでも澄み渡った秋の空をしばらく見上げてみよう。彼方の山の稜線に、勇壮なタカの姿を見ることができるかも知れない。(太治庄三)