ホタルの夜に

2009.06.15
未―コラム記者ノート

 闇夜の川面を飛び交う黄緑色の淡い灯火―。今年もホタルの季節がやってきた。仕事の帰り道、毎年出かけているホタルの観察スポットに寄り道した。普段ならひっそりと静まり返ったこの川も、この時期だけはホタル狩りを楽しむ見物人で賑わっていた。 団体から少し離れたところで、ひとりぼんやりとホタルを眺めていると、どこからかおじいさんがやって来て「ほんまにきれいやなぁ」と話しかけてこられた。「そうですね」と言葉を返したことから、しばらくその方との会話が弾んだ。おじいさんによれば、昔はこの川の中から、湧き出すようにホタルが飛び交い、その光で夜道がぼんやりと見えたほどだったという。しかし、そんなホタルの乱舞も昭和40―50年代にかけてほとんど見られなかったと話し、「おそらく農薬や家庭排水が影響していたんやろう。今は下水が通ったし、きつい農薬も使わんようになったからまた増えだしたわ」とうれしそうだった。 夜道を照らすほどのホタル。またいつかそんな日が来ることを願い、その情景を頭の中で想像しながら帰路についた。  (太治庄三)

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