猟犬稼業も楽じゃない

2009.07.13
未―コラム記者ノート

 先日、わが家の12歳になるビーグル犬(メス)が仕事中に大けがをした。犬が仕事を?と思われるかも知れないが、わが家の犬は「愛玩犬」ではなく、「猟犬」。猟師の父親とともに、市内の有害鳥獣捕獲に出兵し、イノシシの鋭い牙の一撃を食らったというわけだ。ケガの状況は、左前足が数センチ縦に裂け、右前足には直径約1センチの穴がぽっかりとあいていた。猟を終え、犬を回収しようと呼び集めた所、ヨタヨタとしながら父親の元へ帰ってきたのだという。 体長60センチ程度の小さなビーグル。いつもの猟では、小回りを武器に、気の弱いシカやウサギを意気揚々と追い回しているのだが、今回は相手が悪かった。イノシシのオスは、大きいものでは体長1・5メートルにもなる。巨漢を相手にさぞかし怖かったことだろう。父親は「名誉の負傷や」と言って、豪快に笑って見せたが、動物病院で治療を済ませて帰ってくると、古い毛布を引っ張り出して、その上に犬を寝かせていた。 私が近づくと、痛々しい傷が残る足を引きずりながらも、懸命に尾を振った。「猟犬稼業も楽じゃないな」と、頭を撫でてやった。 (太治庄三)

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