速報性で劣っても

2009.08.06
未―コラム記者ノート

 「なに、これ…」。唖然とするしかなかった。通り慣れた道、青々と茂っているはずの田、取材にお邪魔したこともあるお店、その大半が茶色い水で覆われていた。1日未明から丹波地域を襲った豪雨。柏原町で川があふれ、一帯が水没していると聞き、取材に駆け付けた時のことだ。 カメラとノートを頭上に掲げ、ジャバジャバと音を立てながら水害に遭った場所を巡ると、住民や店舗の人ががっくりとうなだれていた。「10年で3回。なぜこんなことに」。悲痛な声が今も頭に残る。 「見たこと、聞いたことを、早く伝えたい」という衝動に駆られたが、発刊体制上、この6日号でようやくの第一報。ホームページで速報を流したものの、紙面の速報性で劣ることがとてもはがゆい。 3日にはようやく梅雨が明けたが、次は台風の季節。むしろこれからの方が水害の危険が高まる可能性がある。 たとえ速報性で劣っても、可能な限り多くの情報を届けたい。記事が、写真が、災害への備えにつながれば幸いだ。 川のようになった道の真ん中で、現場の人たちの声をノートに書きとめながら、決意を新たにした。  (森田靖久)

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