県立柏原病院外科部長の上坂邦夫氏が9月末で退職、病院勤務医生活にピリオドを打たれた。パワーが落ちていく病院にあって、気を吐き続けた外科。トップとして科をまとめ、外来、手術、病棟と一線で診療を続けながら、管理職として、膨大な院内事務もこなした。「医学はサイエンス」との矜持を胸に、しょっちゅうパソコンに向かっては論文を執筆されていた。 論文が学会誌に掲載された時のこと。「原稿料ってもらえるんですか?」との無知な私の問いに「違うよ。こっちがお金払って載せてもらうんだよ」と笑いながら答えて下さった。「白黒だったら安いんだけど、今回はカラー写真を載せたから結構かかった。でもカラーの方がはっきり見えるしね」。 「患者を治すだけだったら、腕のいい職人。医者はある意味で科学者じゃないと」―。正確で堅実な臨床医であると同時に、「医学」という学問の徒。偉ぶらず、同僚、後輩から「人格者」と尊敬を集めた。新天地は、丹波より山深い故郷近くの診療所。好きな山の写真を撮りながら、診察ができる穏やかな環境であることを願っています。(足立智和)