世の中にはいろんな野生動物がいるが、ツバメほど人々に愛されている生きものもいないのでは―?そんなことを強く認識させられた取材だった―。 現場は東古佐の西川さん宅。普段は車庫として使っている10畳ほどの納屋を、繁殖期にはツバメのお宿として丸ごと提供している。車は門先へと追いやられ、床には糞の始末がしやすいようにとブルーシートが敷き詰められる。さらには、天敵のカラスの侵入を防ぐため、カラス避けの黒いビニールを吊り下げるなど、手塩にかけてヒナの巣立ちを見守っている。 今年は、巣の数なんと7巣。多い年では10巣にもなるそうだ。「田畑の害虫を食べてくれるので、農家である私たちにとっては益鳥や」と西川夫妻。ツバメに対してこのような特別な感情を抱くのは、日本人だけではなく、この鳥が分布するヨーロッパや北アメリカでも同じように、万人から親しまれているという。 「もうすぐ巣立ちやなぁ」。楽しげに話す西川夫妻のやさしい笑顔が印象的だった。 ツバメの仲間は世界に約80種。日本には5種が繁殖している。(太治庄三)