クマタカを訪ねて

2010.09.04
未―コラム記者ノート

 ピーッ、ピーッ、ピィーョ―。森の奥、セミしぐれに交じって、頭上から甲高い声が響く。木々のこずえのすき間に上空を飛翔する大きな鳥影を見た。クマタカがついにその姿を現した(前号掲載)。 「クマタカの巣、発見」の一報を受け、発見者のTさんの案内で現場へ。600?の超望遠レンズを背負って40分間、汗だくの山登り。巣はアカマツの巨木にあった。そのそばを巣立ったばかりの幼鳥が我々を警戒してか、何度も頭上を旋回する。幼鳥といえども、翼を広げると1・5?近くもあり、森林生態系の頂点に立つ王者の風格が漂っていた。 今度は親鳥の登場を待ち、飛来するであろう方向にレンズを向けた。集中力が途切れかけたそのとき、大きなヘビをわしづかみにした親鳥が不意に現れた。なんとかファインダーにその姿を捉え、夢中でシャッターを切る。その数秒後、木陰で激しく餌をねだる幼鳥の甘えた声が、周囲にこだました。 国内生息数、推定5000羽。決して楽園とは言えないであろう、この丹波の地で懸命に生きる野生のきらめきを目の当たりにし、心が大きく揺さぶられた。(太治庄三)

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