ドブガイが堀の中に約90万匹生息―。篠山城跡の堀の水質浄化に大きく貢献しているという記事を前号の丹波新聞篠山版で報じた。
ドブガイはその名の通り、湖沼の底の泥の中で暮らしている。入水管から水と一緒にえさとなる植物プランクトンや有機物を吸い込んでエラでこし取り、再び水を出水管から吐き出す。この一連の動作で水が浄化される。90万という数でかかると、毎日37キロもの浮遊物を浄化している計算になり、これは約600人分もの下水処理に匹敵するというから、たいしたものである。
また近年、大きく数を減らしつつある「タナゴ」という魚は、このドブガイのエラに卵を産みつけ、その中で稚魚へと成長する。一方のドブガイも、水底に暮らす魚のエラやヒレに寄生して幼生時代を過ごすことから、見事な共生関係を築いている。
水質浄化に加え、希少な魚の繁殖まで助けているというのに、ドブガイという名前はあまりに失礼というもの。せめて「さん」や「様」の敬称の一つでも付けて呼んでやりたくなるほどの活躍ぶりである。自然の偉大さを改めて実感した取材だった。(太治庄三)