「ヌートリアがドブガイを食べとるで」。最初、この話を地元住民から聞かされたとき「まさか、本当ですか」と笑って返事をしたが、それが事実だったとは―。
ヌートリアについて、どの図鑑で調べてみても「草食動物」とある。当然私もそう思っていたし、実際、水辺の植物や水の中の藻などを食べているところしか見たことがなかった。
水底の泥の中からドブガイを探し当てると、両手に持って鋭い門歯で殻を割り、中身を引きずり出して食べていた。そのあまりの手際の良さとうまそうに食べる姿にしばらく見とれていたが、何枚かを写真に収め、記事にすることができた(本紙1面)。
人と自然の博物館の研究員によると、「各地でドブガイを食べている報告があるが、やはりもともとは草食動物。ドブガイの肉をあまり消化できていないのでは。えさの乏しい冬場の一時的な行動かも」と話す。道理で大食漢の割りには、太っていないわけだ。
何でも食べて飢えをしのぐ底力には敬服するが、南米原産の外来動物だけに国内の在来種には大きな脅威となっている。(太治庄三)