春近し

2013.03.07
未―コラム記者ノート

 締め切りが迫った原稿に追われ、深夜までパソコンに向かう。部屋には苛立ちながらキーボードを叩く、無機質な音だけが響く。行き詰まってふと手を止める。と次の瞬間、裏山から「ホホゥー」と張りのあるよく通る声が響き、数秒後「ホロッホッ、ホゥホォー」と続く。フクロウだ…。毎年、1月下旬ごろになると、この声を耳にし始める。最近では、この鳴き方と合わせて「ホッホッホッ…」と、人の笑い声のような鳴き声も聞かれる。早くも繁殖期に入ったようだ。
 田んぼの中の水たまりでは、寒天質のぶよぶよとした塊がいくつも目に付くようになった。アカガエルの卵塊だ。さらに目を凝らすと、すでにオタマジャクシになっているものまで。気の早いカラスやアオサギは、木の枝をくちばしにはさみ、ピストン輸送。巣作りに懸命だ。
 ヒバリが複雑な鳴き方で空高く舞い上がる。その背景の山々が霞んで見えるのは、春霞か、あるいは大陸から飛来するPM2・5混じりの黄砂か、はたまた花粉で炎症を起こした私の目が悪いだけなのか…。人家の庭先で咲き誇るロウバイが美しい。春近し。(太治庄三)
 

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