桜と甘い自分

2013.03.28
未―コラム記者ノート

 立春をとうに過ぎたのに、暖かくなったり、寒くなったりの日々が続く。三寒四温とはいうものの、その差がかなり激しい。それは暖かい日よりも寒い日に強く思う。
 どちらかというと寒さに弱い私の寝床には、いまだ電気毛布が敷かれている。そこでさなぎのように包まっていると、いつまでも冬が終わらないような気がしていた。
 まだ少し暖かい日、ふと思い出してベランダに出る。そこは昨年から始めた盆栽の棚が占拠している。始めたといっても冬場はかなりさぼった。水をやることも適当だったし、草むしりもおそろかにした。
 なぜその日、ベランダに出たかと言うと、棚の中に一本、桜があることを思い出したからだ。春を告げる桜。それを放って置いた私。
 スローモーションで恐る恐る横目で桜を盗み見て、小さく声が出た。少しだけ膨らんだ芽からピンク色がのぞいている。もうすぐ花が出そうだ。
 手を入れずとも確かに生きる桜の力に感動した。同時に、放って置いても咲くやんと思った甘い甘い自分を戒めた。その甘さは人生にも危険なもの。そんなことを思った春の日だった。(森田靖久)

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