母から電話。「合言葉決めよかいな」。なんのこっちゃ。
「オレオレ」「振り込め」―。挙句、「母さん助けて」と名を変え、被害総額数十億円を超える電話を使った詐欺。わが家にも昔、私を名乗る男から電話があったらしい。事なきは得たが、相次ぐ被害の報道もあり、母はついに対策を講じることにしたのである。
公表しては対策の意味がないので、合言葉が何かは書かない。ただ、私が合言葉を言っても、「そうやったかいな?」。向こうから電話をしてきておいて、第一声が、「合言葉を言え」。心配である。
犯罪史を紐解くと、発端は1915年にまでさかのぼる。情報社会と叫ばれながら100年たっても根絶しない恐ろしい犯罪なのだ。わかっていても、実際に被害に遭うと、パニックを起こしてしまうらしい。
そもそも、他人様の金を奪おうという心が問題だ。その根底には家庭環境や教育がある。犯罪を犯すような心にならなかったことを感謝したい。両親や先生のおかげである。
そんなすばらしい母上。小遣いが欲しくなったら、堂々と合言葉を言いますのでよろしく。(森田靖久)