波部さんの戦争体験

2014.07.31
未―コラム記者ノート

 篠山市上宿の波部時雄さんは、大正5年生まれの98歳。「こども新聞」8月号で戦争体験を紹介したいと思い、当時の様子を語っていただいた。シベリア抑留を経験されたことは聞いてはいたが、改めてお話をうかがうと、戦後30年経って生まれた私には、想像がつかないような過酷な体験の連続だった。
 満州でソ連軍の侵攻を受け、部隊220人中生き残ったのは6人。ロシアのシベリアに送られ、マイナス40度の中、野宿で収容所ができるまで待たされ、収容後は過酷な労働と貧しい食事。抑留生活は3年近くにも及んでいる。
 「毎日、いつ死ぬかと思っていた」との言葉は文字通りの意味だろう。体が屈強だったわけではなく、生きるための知恵を絞り、気持ちを強く持ち続け、家族の待つ篠山へ生きて戻られた。柔和な笑顔と朗らかな語り口の波部さんだが、精神的な強さは計りしれない。
 波部さんは98歳とはとうてい思えないほどお元気だが、大戦を経験された方はどんどん少なくなっている。約70年前のできごとを、体験で知っている方がいなくなる時代が近づいている。(古西 純)
 

関連記事