祖母の御朱印帳

2015.02.21
未―コラム記者ノート

 先日、父親が仏壇下の物入れを整理していると、2冊の御朱印帳が出てきたらしい。家族のだれもが「自分のものではない」とのこと。表紙をめくってみると、9年前に亡くなった祖母の名前が鉛筆で薄く書かれていた。
 1冊は有名な33カ所の観音霊場を巡るときに使うもの。もう1冊は、家の宗派の開祖とゆかりがある寺院を巡礼する際に使用するものだった。どちらも空白のページが目立っており、巡礼の途中だったようだ。祖母は地元の寺行事か何かで、各地の寺院を参拝していたから、そのときに御朱印をもらって回っていたのだろう。
 2冊とも、最後に御朱印を頂いた日付は1991年となっていた。95年に祖母が脳梗塞で倒れて入院生活を送るようになっていたから、少なくとも20年はページがめくられていないということになる。
 祖母は何を願って巡礼していたのだろう。家内安全か、それとも健康長寿だろうか。今となっては知る由もない。
 祖母が遂げられなかった満願成就。何年かかるのかわからないが、祖母に代わって、いつの日か果たしたいと思う。(田畑知也)
 

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