夏にもう一度勇姿を

2015.04.04
未―コラム記者ノート

 夏、春の甲子園連覇を目指した大阪桐蔭高校野球部の松井孝太郎投手(新3年生、柏原中出身)を追って1回戦から準決勝まで4試合、甲子園球場に足を運んだ。松井君は背番号10。優勝した敦賀気比に敗れた準決勝で初めて甲子園のマウンドに立った。
 試合後、インタビュールームで話を聞いた。子どもの頃から憧れていた場所に立った喜びはなく、終始うつむき加減で、敗れた悔しさと反省の言葉が続いた。準々決勝までは取材に「いつも通りです。準備はしてました」と笑顔で答えていた彼が初めて見せた無念の表情だった。
 監督に「日本一を目指そう」と言われ、大阪桐蔭に進学。進路を決めた時から「甲子園優勝」が目標になった。昨年の夏は惜しくも逃したメンバーに入り、優勝がねらえるところまで来ていた。「準決勝で負けるのが一番もったいない」「悔しい」と言葉を重ねた。
 昨年は不調だった。「どん底を味わった失うものはないさあいこう」とつばに書いた帽子でのぞんだ。自分を奮い立たすための言葉は、敗れたチームを鼓舞する言葉になった。臥薪嘗胆。夏に、もう一度勇姿が見たい。(足立智和)
 

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