6月からスタートした連載「戦後70年―丹波人の証言」が13日号をもって終了した。丹波、篠山両市の8人の方を取材させていただいたが、八者八様の体験があった。
驚いたのは、大勢を占めた悲惨な話の中にもどこか牧歌的な部分があったこと。食事はまずかったとか、軍隊の教官は怖かったとか、飛行機は楽しかったとか。その多くが戦中の話題を語られる瞬間で、戦争末期、終戦後の話になると、悲惨と後悔と現代社会への心配だけになった。
そこではたと気づかされた。「戦争=つらい体験」だと決めつけていたことに。どんな時でも、つらいことだけでなく、わずかでも楽しさや穏やかさもあったはずだ。だから大変な話を聞くと決めてかかっていた私には、驚きとして映ったのだと思う。
物事を一面的にとらえることの危うさ。それは、どんなことにでも当てはまる基本的な考え。それも戦争体験の取材から教わったことだった。
記憶の伝承とは、本来、節目の年にだけ行うものではないと思う。今年教えてもらったことを糧に、また取材に当たろうと思う。(森田靖久)