「まるでごみ屋敷」の怒りに満ちた妻の声に重い腰を上げた。車庫の片隅に山積みになった雑誌や衣類、車の部品など、幼少期から30歳ごろまでの思い出の品を捨てることになった。
ほこりまみれの衣服の塊をどかすと、あの当時どれだけ探しても見つからなかったカバンがあっさり出てきた。錆びてはいるが上等な折りたたみ椅子も出てきた。「また使うかも」と取り置こうとした瞬間、「そんなん、いつ使うん」とぴしゃり。未練のある品々を次々に「捨てるボックス」に放り込んだ。
手帳が出てきた。裏表紙に「小1」の文字と自分の名前があった。記憶にないが開いてみると、ドラえもん、飛行機、なぜか巻きウンチのイラストが描かれており、「インフルエンザ注射をするハンコを押す」「なかよし会の準備をしてくる」など学校からの連絡事項がどうにか解読できる文字で書かれていた。ページの後半からは「庄三の靴20」「1年B組で叱り方の映画“善悪のけじめ”」などの若き日の母親のメモ書きがぎっしり。懐かしさにほっこりとし、そっとポケットにしまい込んだ。 (太治庄三)