リオ五輪での日本人選手の活躍がうれしい。正直に言うと、それほど関心が高かったわけではないが、現金な話で、いざ開幕し、活躍が報じられると気分が盛り上がってくる。
一方で、五輪の話題がいろんなことを霞ませていることにも気づく。
昨年の同じ時期、私の一番の関心は「戦後70年」だった。丹波地域の戦争を知る人に話をうかがい、体験を記事にさせてもらった。
銃弾を浴びた人。仲間の遺体を焼いた人。「お母さん」とつぶやいて逝く人。話の中には、現代では想像が難しいような内容もあり、戦争という歴史は知っていても、実体験を直接聞くと、あらためて化け物の肌に指先が触れたような気がした。
1年後、オリンピックの話題が世間をわかせている。70年前のことを考えると、日本がスポーツで世界と戦っているのだから、これほど平和的な話はない。だが、「戦後71年」も忘れてはならないと思う。
15日の正午は、1年前に味わったあの感触を思い出しながら黙とうをささげた。(森田靖久)