休校の子、どう向き合う? 「互いに心とげとげ自覚を」 ”困った子”は”困っている子” SSWにアドバイス聞く

2020.04.17
ニュース丹波篠山市

「コロナ疲れの中、おかしいと感じることがあれば、とにかくどこかに発信を」と呼びかける松本さん=兵庫県丹波篠山市北新町で

新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言の発令を受けて、兵庫県丹波篠山市内の学校現場も5月6日まで臨時休校となっている。3月からの度重なる突然の休校と、世間を覆う不安感。ささくれだつ子どもたちの心に保護者はどのように向き合えばいいか。児童・生徒の問題に対し、保護者や学校と協力しながら、解決を図る専門職「スクールソーシャルワーカー(SSW)」で、市教育委員会教育研究所に籍を置く松本千代理さん。「コロナ疲れ」などについて話を聞いた。

―新型コロナウイルスに伴う休校措置は子どもたちにどう影響していると考える

子どもも保護者もいわゆる「コロナ疲れ」が起きている。(1)いつ終わるとも知れない、先の見えない不安(2)休みだが、感染拡大防止のために行動制限が出ている―この2つが「疲れ」の要因。

お互いに気分がモヤモヤし、心がとげとげしくなりやすくなっている。そのことをまず自覚してほしい。

―「疲れ」に対応するためには

(1)については、ゴールが分からない中では、短期スパンでゴール設定をすることが大切。緊急事態宣言の期間は5月6日までとされているので、ここを一つのゴールにし、「ここまでがんばってみよう」と考えるのも一つの工夫だと思う。

(2)は、「制限されている」ということは、「制限されていないこともある」ということなので、できることに目を向けてみる。散歩やウオーキングはできるので、家の中にずっといるのではなく、小さい子ならば、一緒に外に出て、花を見るなど、家とは違う景色を楽しむことで、考え方も変わってくる。

―家にずっといる子どもとどう向き合えばいいか

「子どもだから」と考えないで、保護者も子どももお互いに言葉を重ねることが大事。中には幼くて気持ちを言語化できず、物や保護者に当たったり、攻撃的になるケースもあると思う。

気持ちを落ち着けるためには、大人が言語にしてあげること。「つらいよね」「これが嫌だったんだよね」と。子どもが、「しんどいことを分かってくれている」と思うようにしてほしい。

―家でゲームばかりしている子も多いと聞く

子どもがゲームをするのは単純に好きということもあるが、現実逃避の手段というケースもある。

一方、ゲームの利用時間がコントロールできなくなり、ご飯を食べなかったり、寝なかったりと、生活に支障が出る「ゲーム障害」という病気もある。このような状況であれば、学校でも市教委でもいいので、まずは連絡してほしい。

―ほかに休校による課題は考えられるか

切実な問題として、新型コロナウイルスの感染拡大により、保護者の収入減がある。強いストレスを感じているとき、矛先は弱い立場である子どもに向かいやすい。全国的に児童虐待などDV(ドメスティックバイオレンス)のリスクが高まっている。

こういう状況下では、子も保護者も、つらい思いをどこかに発信することが大事。もし虐待を受けている子がいれば、警察でも市役所でもいいので、とにかく連絡して。コロナ以前から相談先のプリントを配布している。相談のSNSもある。ネットでも簡単に検索できる。

―最後に

私の立場から大切にしたいことは、今回の休校は子どもが主体、子どもたちのためということ。主体者をないがしろにしてはならない。

休校したり、再開したりしながら終息に向かうはず。分からないことも多いが、とにかく、子どもたちに「伝えていく」という姿勢を持ち続けたい。

普段からそうだが、みんな何かしら悩みは持っているもの。ただ、家庭で悩みがあれば学校で、またその逆といったように、置かれた環境の中でバランスを取っている。この環境のどこかに不具合が生じると、問題行動が現れる。「困った子」といわれることがあるが、本当は「困っている子」ということ。

特に今は休校によってバランスを崩しやすい状況になっている。また、休校に慣れてしまい、学校が再開することが環境の変化となり、心のバランスを崩す子がいるかもしれない。学校現場と連携しながら、気にかけていきたい。

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